公開日 2017年12月07日
最終更新日 2017年12月07日
【受賞者】
大竹幸恵(おおたけさちえ)氏
長野県長和町教育委員会教育課長補佐・文化財係長、黒耀石体験ミュージアム学芸員
【受賞業績】
信州縄文時代黒曜石鉱山の調査研究・保存普及・体験学習に関する系統的展開活動
【受賞理由】
大竹幸恵氏は、長野県中部高地に集中する黒曜石原産地群の一つである鷹山遺跡群を中心に黒曜石の採掘・流通に関する研究を四半世紀にわたり続けてきた。特に、星糞峠 (ほしくそとうげ)で発見された約200箇所に及ぶ縄文時代の黒曜石採掘跡の調査研究により、採掘の具体的方法,採掘の継続・断絶の実態を解明した。
採掘跡群は2001年1月、「星糞峠黒曜石原産地遺跡」として国の史跡に指定され、峠のふもとに長和町立「ほしくずの里たかやま黒耀石体験ミュージアム」が設立され、氏はそこを拠点に、研究をわかりやすく伝える展示活動に力を注ぐとともに、多種多様な体験学習や独創的なイベント、「黒耀石のふるさと祭り」などを推進している。
黒耀石体験ミュージアムにおける展示解説と体験学習のユニークな取り組みは全国に知られ、また外国からも注目され、韓国の全谷(チョンゴク)先史博物館、台湾の十三行(シーサンハン)博物館でも大竹氏によって紹介された。体験ミュージアムにおける多様な取り組みには多くのリピーターがあり、山間部にあるミュージアムとしては破格の集客力を誇っている。
また、長和町は「採掘跡」という共通点から、イギリスの著名な新石器時代のフリント採掘跡であるグライムズ・グレイブス遺跡との世界初の姉妹遺跡協定を、イングランドのセットフォードで2016年に締結したが、大竹氏はここでも中心的な役割をはたし、中学・高校生14名からなる「長和青少年黒耀石大使」を引率して活躍した。
このように、長野県長和町の山間部黒曜石原産地にある体験ミュージアムを拠点に、信州縄文時代の黒曜石鉱山の調査研究・保存普及・体験学習に関する体系的な展開活動は、草の根の遺跡保存・普及・利活用の姿としても注目に値する。その先頭に立って活動を推進してきた大竹氏の実践は高く評価される。
以上の業績に対し、日本イコモス国内委員会は大竹幸恵氏に「日本イコモス賞2017」を授与する。
【大竹幸恵氏主要研究業績】
(2017)「黒耀石の歴史遺産を活かした博物館活動と世界遺産への夢」『長野県考古学会誌』154号 特集「信州産黒曜石をめぐる諸問題:信州黒曜石フォーラム2009-2014」長野県考古学会
(2015)『鷹山遺跡群VII』(共著)長和町教育委員会・鷹山遺跡調査団
(2015)「史跡を活かした体験学習活動と黒耀石体験ミュージアムの活動」『考古学ジャーナル』666号ニューサイエンス社
(2014)「星糞峠をめぐる黒耀石資源の開発と流通」『考古学ジャーナル』659号ニューサイエンス社
(2011)「星糞峠黒耀石採掘址と近接地における原石利用の様相」『信州黒曜石フォーラム2011』信州黒曜石フォーラム実行委員会
(2004)『黒耀石の原産地を探る鷹山遺跡群』新泉社
(2003)『鷹山遺跡群VI』(共著)明治大学黒耀石研究センター用地内遺跡発掘調査団
(2001)『鷹山遺跡群V』(共著)長門町教育委員会・鷹山遺跡調査団
(2001)『県道男女倉長門線改良工事に伴う発掘調査報告書‐鷹山第I遺跡及び追分遺跡群発掘調査-』(共著)長門町教育委員会・鷹山遺跡調査団
(2000)『鷹山遺跡群IV』(共著)長門町教育委員会・鷹山遺跡調査団
(1999)『鷹山遺跡群III』(共著)長和町教育委員会・鷹山遺跡調査団
(1998)「星糞峠の原産地と遺跡群」『第10回長野県旧石器文化研究交流会』
(1997)「長門町追分遺跡の調査」『第9回長野県旧石器文化研究交流会』
(1989)「尖頭器文化と遺跡群の形成」『長野県考古学会誌』59・60号特集「中部高地の槍先形尖頭器」長野県考古学会
(1987)「押型文系土器文化の石器群とその性格」『樋澤押型文遺跡調査研究報告書』岡谷市教育委員会
(1986)「第5節先土器時代の茅野」『茅野市史』上巻茅野市教育委員会