訪英随想「おもてなしの心」

公開日 2012年11月01日

最終更新日 2016年07月26日

 私はこの十月、わが町にある黒耀石の博物館「黒耀石体験ミュージアム」と英国東部・ノリッジ市にある「セインズベリー日本藝術研究所」との学術研究協定を結ぶために渡英しました。

 また、この協定を足掛かりに、町の子どもたちがホームステイなどによって交流できる国際姉妹都市提携の候補地も訪問しました。

 イギリスまでの行程は、10 月2日の早朝に成田空港を出発し、オランダのアムステルダム空港で研究所のあるノリッジ空港に向かう便に乗り換えるというものでした。およそ半日に及ぶフライトと7時間の時差により、イギリスでの滞在日数は実質3日間ほどで、この短い期間に公務を終えて7日の早朝には成田空港に戻るという大変慌しいスケジュールでしたが、初めての訪英にも関わらず、実にたくさんの方々に歓迎された実りの多い訪英でした。

 セインズベリー日本藝術研究所は、ヨーロッパにおける日本文化研究の中核的な機関として著名です。学術協定の内容は、博物館と研究所が教育と研究の連携を目指すものでしたが、協定書の大きな特徴としては、研究所が国際姉妹都市提携について窓口となり、その実現に向けて全面的な支援をすることが盛り込んである点にあります。

 国際姉妹都市提携の候補地となっている町は、ノリッジ市に隣接するセットフォードという人口2万人程の静かな町です。古くは、長和町星糞峠の縄文時代の黒耀石鉱山と同時代から石器の材料となったフリントという石を採掘していたグライムズグレイブス鉱山があり、採掘の跡がクレーター状の窪みとなって連なる遺跡の様子は、世界の中でも非常に類似した景観を示しています。また、この地域では、街づくりとして中世からの歴史的建造物や古道を保存整備していることも、中山道やその宿場の整備に取り組んでいる当町と共通しています。

 ホームステイを考える上で、子ども達が互いの歴史や伝統文化を通して国際交流を行い、グローバルな視点でふるさとを見直すということは、地域の将来を担う人材を育成する上で非常に重要な取り組みだと思っています。そして、遠く離れたイギリスの地に、子ども達の交流を支援する研究機関が存在する事は、信頼と安心に裏付けられた事業の実現に必要不可欠な体制づくりであると考えています。

 国際交流は、国や組織間の交流であると共に、そこに参加する人と人との関係が重要であることは言うまでもありません。セインズベリー日本藝術研究所での協定書調印、そして、その後に訪れた研究所の展示施設であるセインズベリー視覚芸術センターでは、研究所のスタッフやセンターに隣接するイーストアングリア大学に学ぶ多くの日本人留学生や教授陣が、持ち寄りの軽食で歓迎のレセプションを開催してくれました。最終日に訪れたセットフォードの庁舎でも、既に、この5月に長和町を訪れたセインズベリー日本藝術研究所のサイモン・ケイナー氏から事前の情報が伝えられていたようでした。町長をはじめ、行政の職員、議会議員の代表、また、地元の博物館の関係者や学校の先生など多くの方々が我々を出迎え、子ども達のホームステイや国際姉妹都市提携に向けて積極的な意見が交わされ、その後には、やはり、その場で軽食によるランチを提供して下さるなどの心配りを頂きました。

 紅茶を飲みながらサンドウィッチやクッキーを頂くという光景は、英国では極普通のことなのかもしれません。しかし、その席に参加する皆さん自身が、その場を設定して交流を深めるという心配りは、けして形式的なものではなく、かつては、私たちも大切にしていた「もてなしの心」に溢れたものでした。

 ティーカップを片手に再度、「子ども達はもとより、地域ぐるみで交流をしましょう。」という笑顔の提案に、私たちは、言葉や生活習慣を超えて新たな絆の道筋を見ることができた思いでした。是非、両町の国際姉妹都市提携を実現させ、地域の皆さんが遠い異国の文化に触れることで大いなる夢を抱けるようにしたいと願うものです。

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